KAGRA
岐阜県・神岡鉱山につくられた重力波望遠鏡。
わずかな時空のゆがみを観測。はるか彼方の宇宙でおきている天体現象を調べる。
KAGRAとは?
正式名称は「大型低温重力波望遠鏡 KAGRA(かぐら)」。
世界有数の重力波検出器。 海外の重力波望遠鏡と協力し、はるか彼方の宇宙でおきている天体現象を調べたり、これまでの重力理論の検証・修正などに使う。
重力波とは?
重力波は時空のゆがみが波として伝わる現象。
わかりやすいイメージは水に石を投げこむ様子。石が水面に落ちると重さで波が生まれ、落下地点を中心に広がっていく。同じように宇宙空間で物が動くと、物の重さで時空がゆがみ、重力の波として広がっていく。
この文を読んでいるあなたの体重でも時空はゆがんでいる。あなたが動けば重力波がまわりに伝わる。ただし、とても小さな波なので誰も観測できない。
これまでヒトが観測できたのは非常に重い天体である、ブラックホールや中性子星の衝突で生まれた重力波のみ。それでも空間のゆがみは、太陽―地球の距離で水素原子1つ分(1億5000万kmで1000万分の1mm)ほどしかない。KAGRAはこれを捉える。
KAGRAはどうやって重力波を観測する?
どうすれば重力波で時空がゆがむ様子を確かめられるのか?
定規でなにか物を測れば、空間がゆがむと物が伸び縮みするのでわかりそうだ。ところが定規も伸び縮みしてしまう。空間がゆがんでも長さの変わらない定規が必要だ。
そこで空間がゆがんでも光の速さは変わらないことを利用する(アインシュタインが提唱した特殊相対性理論の光速度不変の原理)。
レーザー光が進んだ時間で、ある長さをを定期的に調べる。光の速さが変わることはないので、時空がゆがむと測った時間が変わる。
KAGRAの工夫
小さな時空のゆがみを観測するため、KAGRAにはいろいろな工夫がある。
3kmの真空ダクト
レーザー光で測る距離が長ければ、わずかな距離の変化を見つけられる。
KAGRAには3kmの真空ダクトが2本、L字に交わっている。それぞれの間をレーザー光がおよそ1000往復もする。2本のレーザー光に生まれる時間差から、どちらの向きにどれだけ空間が伸び縮みしたのか調べられる。「レーザー干渉計(マイケルソン干渉計)」というシステム。
徹底したノイズ防止
精確に時空の伸び縮みを測るため、ノイズを防ぐ対策がなされている。
1つ目が、望遠鏡を地下につくったこと。KAGRAは飛騨山中の地下200mに、トンネルを掘削してつくられた。岩盤が硬く地上の振動をおさえられる。
2つ目は、-253℃に冷やされていること。レーザー光を反射させる鏡が熱で振動しないようにする工夫。鏡は低温に強い人工サファイア。
主な参考文献
1) 林公代. "水素原子1つ分の「時空の歪み」を感知せよ!". JBpress. https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57830, (accessed 2019-10-05).
2) "大型低温重力波望遠鏡KAGRA". 国立天文台. https://www.nao.ac.jp/research/telescope/kagra.html, (accessed 2019-10-05).